「MaaS✕データ活用」CREWの未来と移動データの可能性

執筆者

  • 松田健(まつだけん)

松田健

初めて入った会社は楽天で、オークションサイトの立ち上げや違反対応、保証対応を経験。その後はヴィレッジバンガードなど2社を経て、メルカリに転職。CSの中のBIチームのヘッドを務める。マネジメント要素よりは、カバレッジが広く他のスキルとの掛け合わせで価値が発揮できるようになりたいと考え、転職を検討。同時期に転職活動をしていた岩田からAzitの評判をきき、最終的にBIとして入社。

はじめに

Azitは社員数30名以下のタイミングからBI(ビジネス・インテリジェンス)が存在し、私はその中のデータアナリストとして入社しています。

サービス形態・事業内容等にもよりますが、一般的なスタートアップにおいて、大きくグロースする前にBIを採用することは稀です。 なぜこれほど早い段階からAzitにBIというポジションが設けられたのか?

本記事では、私がこれまでAzitで行ってきたことを『過去・現在・未来』の3つの時間軸でご紹介しつつ、CREWをデータ観点で見たときに魅力になり得るポイントや、サービスの持つポテンシャルについて公開します。

早い段階でAzitにBIが存在する理由

データアナリストは、会社全体の意思決定をより良いものにするために存在しています。 正確な数字やデータが得られることで各部門の仮説や施策の精度が上がり、よりサービスが成長することに繋がります。

CREWはサービスモデルが複雑且つ制約も多く、より良いサービスにするために会社としてどこから注力すべきかの判断が難しいため、データ活用のニーズはもとから高く、データをチェックするカルチャーは備わっていました。

さらに、本記事でも後ほど触れたいと思いますが、事業モデルとしてデータが非常に重要な意味を持つことも多くのスタッフが理解していたため、早期にBIチームを設けるという考えに至ったのだと思います。

また、まだ組織がコンパクトなフェーズなので、経営上の意思決定を含め、重要な意思決定にデータが活かされやすく、データアナリストにとっても、やりがいを感じやすい環境と言えるかと思います。

入社当初〜現在

入社当初は、それぞれのプロジェクトや数字を見ている各部門が片手間に数字を集計・整理している状態でした。

その時点でのベストエフォートでは有りましたが、結果として集計や数値の定義づけが正確に行われず、曖昧な集計結果を元にプランを練って実行している施策が多く見受けられました。 また、正しいKPIが不明瞭で横連携が発生しづらく、より良いアクションに繋がりにくい状態でした。

このため、まずは以下の2つを並行して対応をすすめています。

  • KPIの整理

    • もともと使われていた、KPIの見直し、再定義をすること
    • KPIをさらにいくつかの要素に分解し、解像度をあげること
  • KPIとサービス構造の理解

    • サービスの構造全体を図表化し、それぞれのKPIの相関関係を明らかにすること
    • 社内全体が同じ目線、同じ基準で議論することが出来るようにすること

なんとなく全体の数字はとれていても、そこから先の詳細な情報は取得できておらず、 当時は「多分…」「恐らく…」といった仮説のまま、各所で議論が進む状況が非常に多く見受けられました。

サービスの構造を会社全体できちんと理解し、目線を合わせ、より効率的な意思決定をするためにも、まずはここから取り組むべきだと考えました。

現在は共通のビジネスモデル図を整備しています。 さらに、図上にKPIを組み込み、それぞれどれくらいの数字なのか規模感をつかみやすいようをまとめている状況です。

ビジネスモデル図(簡易版)

CREWはどのようにデータを活用しているのか

私達が運営しているCREWというモビリティプラットフォームは 『近くを走る誰かのクルマをスマホで呼べる、スマート送迎アプリ』であり、CtoCのマッチングサービスの一種です。

いわゆるMaaSという領域になるのですが、 実はこの領域はデータ活用によって解決できることがたくさんあります。

【補足】 MaaSとは「人やモノの移動=サービス」と捉える概念のこと。 要は、車やバイクをはじめ、バス・鉄道・航空機・フェリーなどの乗り物を単なる移動手段としてではなく、移動する人のニーズに応じ連動して利用できる「1つのサービスへの統合」するということです。

GMVやドライブ数などの主要な結果の集計はもちろん、マッチングのためのアルゴリズムの改善やアプリ上の表示など、様々なことにデータを活用しています。

たとえば、スムーズに双方ストレスなくマッチしてもらうためには

  • ライドの多いエリアや時間帯
  • CREWパートナーの人数やエリア毎の密度

その他、いくつかの重要な要素があります。

これらを過去のデータから予測して必要な情報を利用者へ届けることで、より良い需給のバランスが生まれ、効果的・快適なマッチングへと繋がります。

この事例だけを見ても、MaaSの領域はデータを活用することが事業成長の近道にもなり、データの重要性がわかります。

MaaS領域におけるデータの価値

ドライブシェアのマッチングという領域はデータの活用の幅が広いです。 あまり他のサービスでは扱えないデータを扱った分析や施策の検討ができます。

『レシート10円で買います』のようなサービスがあったように、人の行動データそのものが、近年価値が高まっていると感じています。 移動におけるユーザーの行動や動向のデータも同様で、MaaSにおいては、どのように移動する意思を持って人が動いているのか?という情報に意味があり、価値が高まっています。

そのため、データという観点でCREWは一貫性のある構造化されたデータがとれるので 今後利用価値の非常に高いデータを扱うことができます。

例えば、今は鉄道インフラなどの位置によって場所の価値が決まっていますが CREWのようなサービスが日本で当たり前に利用される未来がきたとき、移動の課題が解消され 住む場所が固定されず、不動産の概念が変わるかもしれません。

そうすると

  • いつ
  • どこから
  • どこへ
  • どのくらいの人数
  • どのような方法で移動しているのか

といった情報は、駅の乗降車数などの既存のデータ以上に、細分化され解像度の高いデータが必要となり、重宝される世界が来るかもしれません。

MaaS領域全体できちんとデータを集め、それを事業の垣根を超えて相互に利用することができれば、多くの選択肢が産まれると考えています。

CREWを通じ、現在の移動インフラでは担えないラスト1マイルと呼ばれる移動の一部を、きちんと構造化されたデータとして集積・活用していきたいと考えています。

CREWならではの難しさ

CREWを通常のCtoCアプリと比較してみましょう。

サービス比較図

  • 需要と供給の転換

フリマアプリでは、出品者が売上で何かを買うことで購入者へ転換したり、購入者が「自分も売ってみよう」という購入者から出品者への転換は比較的起こしやすい。 CREWの場合、免許・車を所有している人は、ライダーとして利用する必要性が低く、ライダーからCREWパートナーになるには、反対に免許・車の取得が必要。 需要と供給の利用に対するニーズや属性が明確にわかれており転換が起こりにくい。

  • 気軽さ

フリマアプリでは、モノの売買を行う。多くの人にとって売買は日常であり、オンラインでの売買も近年敷居が下がっている。 CREWの場合、地域にもよるとは思うが車を所有していることが稀。また、他人を車に乗せる、他人の車に乗せてもらうという行為はともに、売買より気軽ではないと思われる。

このように、同じCtoCでも難易度の高いサービスモデル且つ、価値あるデータを扱えるという意味でも非常に魅力的な事業だと感じます。

MaaS × データ活用方法 〜海外事例とCREWの比較〜

ドライブシェア・ライドシェアは、法制度の違いなどもあり、日本に比べて海外のほうが圧倒的に進歩しています。

例えば、需要が発生する場所にドライバーが待機していないと、マッチングされません。 逆にドライバーが待機していても、ライダーからのリクエストが無いとつまらなくなって使われなくなってしまいます。

海外では、これを解決するために、「いつどこでどのくらいの需要が発生するか」を予測し、「ドライバーをその場所へ移動」させるため、ゲーミフィケーションや、場所や時間によって報酬額を変えるダイナミックプライシングといった方法をとっています。

ゲームとしてのクリア条件となっているエリアや報酬の高いエリアへ、自然とドライバーが移動することにより、需給のバランスがとれ効率時なマッチングが行われる仕組みです。

また、どのライダーとどのドライバーをマッチングさせるべきか?といった研究も盛んに行われており、マッチング効率やGMV、UXの最大化などがテーマになります。

さらには、膨大な移動データとAIを駆使して、サービスの枠をこえ、道路の信号や標識を自動操作し、渋滞の緩和など都市交通の最適化をする都市計画プロジェクトまで産まれています。

これらの技術や研究には、機械学習でのアプローチが非常に有効です。

CREWでもプロジェクトをつくり、具体的なアクションを始めています。 プロジェクトでは、機械学習を行うために不足しているデータはないか、今後に向けてのデータ基盤の構築などの準備を行っています。

また、さまざまな規制やサービスを取り巻く環境は、海外と日本では異なる点も多いため 日本ならではのやり方が必要となります。

並行して機械学習を使って何をしていくか、何の問題を解決するために機械学習を使うかなども、時間をかけて検討しています。

例えば、CREWは、ガソリン代や高速道路利用料金などの実費とプラットフォーム手数料、任意の謝礼をライダーが支払うという形でサービスを運営しております。

CREWの決済モデル

運営会社からCREWパートナーへの支払いが発生することはありませんので、前述のダイナミックプライシングを、そのまま行うことは出来ません。

私達はデータを活用することで、日本ならではのやり方で、CREWパートナーとライダーが感じている使いづらさを解消したいと考えています。

一例として、過去の需要データをもとに、ドライバーアプリ画面の地図上に需要の高いスポットを表示する機能をリリースしました。

ZONE制イメージ図

パートナーさんはこれから向かうエリアや待機場所の参考にすることが出来るようになりました。

今後も、予測の精度を高めて時間帯毎に細かく出し分けをしたり、リアルタイムでパートナーさんにおすすめの移動先をレコメンドしたりなど、出来る可能性があると思います。

このようにCREWパートナー・ライダーの双方にとって好循環となるような何かにデータを使いたいと考えています。

さいごに

データアナリストという職種は意思決定のサポート機関ではなく、会社全体をドライブさせるのに非常に重要な役割を担っています。 Azitは全員がデータの重要性を理解し、一緒に前に進むことのできる組織です。 そんなBIチームで一緒に頑張れる仲間がこれから一人でも増えて、更にチームとして会社に貢献していけたらいいなと思います。

MaaSの世界やドライブシェアは、データ分析や機械学習などによって解決できることが多く、今までのあり方をガラッと変えるような、大きな変革が起こりやすい領域かもしれないです。

自動運転が実現すると、また更に違った顔を見せるでしょう。 今車を所有している人は、維持費だけでもかなりのコストをかけているかもしれませんが 数年後には、自分が車を利用しない空き時間で、車が勝手にお金を稼ぐようになるかもしれません。

すると車そのものが資産になり、車の所有の概念が変わるかもしれません。 世界が変わる、それをつくるプラットフォームがCREWだといいなと思います。

採用情報

Azitでは現在BIチームの採用を強化しています。是非興味をお持ち頂けた方はご連絡ください。

  • データアナリスト(現状1名)

    • Azitのデータ分析組織をゼロから立ち上げ、CREWが持つデータのポテンシャルを最大限発揮していただくポジション
  • SRE(現状2名)

    • リアルタイムな位置情報データを扱い、高いトラフィックを処理していくポジション
    • サーバーサイドのAPIサーバー実装
    • サービスの安定稼働のためのインフラ構築
    • 開発環境の基盤構築
  • その他、BI周りで募集中の職種一覧

    • データサイエンティスト
    • データマネジメント
  • 職種関係なく共通する求める人物像

    • 本記事を読んでデータのポテンシャルに興味を持ってくださった方
    • BIという領域における何かしらのスキルを持っている方(アナリスト・PM・コンサルタントなど、主に定量分析に強みを持つ方)
    • Azitという会社へのカルチャーマッチ

最後までお読み頂きありがとうございました。

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