法と向き合い、愛される体験をひねり出すPMの頭の中

はじめに

インターネット産業が発展し始めて早くも20年以上たった現在では、道端でふと思いついた良さげなアイデアなんてものは、どこかの知らない誰かさんが既に着目して、事業を始めているケースが多いものです。

「もしかしたら…これは…」と思って調べてみては、自分のキラキラした真新しいアイデアが世界では既にスタンダードだったり、なんなら時代遅れだったりして、ブルーな気持ちになるものでしょう。

逆に考えてみると、良いと感じたアイデアがまだ世界で実現されていない場合、そこには理由があるわけで、それは「世の制約条件」だったりするものです。 「世の制約条件」があるから誰も始めようとしない、あるいは始めてみるも挫折していく。

そういった「世の制約条件」と付き合いながらどうやって、目指すべき世界を実現させるのか。 本日はそういったお話ができればと思います。

ブルーになるPMの図

法とUX

CREWにおけるUX

自分が現在携わっている「CREW」もそういった、世の中と向き合っていけなければならないサービスの一つです。 知らない方も多いと思うので簡単に紹介をさせてください。

CREWは”乗りたい” と “乗せたい” を繋げる移動のモビリティプラットフォームサービスです。 アプリを起動して出発点と到着点を設定すると、近くを走るCREWパートナーと呼ばれるドライバーとマッチングをし、お好きな場所まで送ってもらうことができます。

CREW説明図

CREWを取り巻く法

欧米を中心に急拡大しているライドシェア。その多くは有償サービスで、いわゆる公共交通よりも安価に移動することができる新しい移動手段として注目されていますが、現状日本では道路運送法の規定によって不可となっております。

そしてCREWも他の人の自家用車に乗車するというサービス特性から、引き合いに出されることがあります。

CREWの場合はサービスの「対価」として報酬を支払う仕組みではない点が欧米のライドシェアサービスとは異なります。

CREWに乗った人は実費(ガソリン代や高速道路代など)とシステム利用料のほかに謝礼を支払いたい人が自由に謝礼を支払うことができるモデルになっています。謝礼に支払い義務はありませんし、金額内容も自分で決めることができます。

この部分は国土交通省が2018/3/30に出した「通達」という規定に従ったものであり、運送に対する直接の対価が発生しない無償運送サービスに分類されるという点において「通達に沿った(規則に従った)」運営となっております。

さて

本題に入ります。 様々な制約条件の絡み合うビジネスの中でプロダクトマネージャーが何を考え、どう動き、いかにして最適な解にたどり着くのか。

私自身、まだまだ道半ばでして、これが正解、と言えるものはとても無いのですが、 CREWのプロダクトと1年以上生活をともにしてきた身として参考になることがあればと思い、綴らせていただきました。

その一:制約条件の本質を理解する

規定の生データを肉眼で見るということ

情報発信のハードルがぐいっと下がり「ググる」という行為がアタリマエ化した結果、触れる情報量が増えただけでなく、誤った情報が目に触れる機会も増えました。

情報の正誤の判定がつくような知識を持った方であれば問題ないのですが、専門性がない中で多くの情報に触れると、正常な判断がつかなくなっていきます。

仮にポテンシャルのあるアイデアを思いついてもいろいろ調べていくと「なんか危なそう…だめなんじゃないかな…」といった不安感に敗北し、フィールドから去っていくことになってしまいます。

だからこそ、私は「生データを肉眼で見る」ということが新たなサービスの切り口を考えつくチャンスになると思っています。

もちろん情報収集は大切ですが、多大な情報に振り回されるよりは「正しい情報」である規定の生データに目を通し、クリアな頭で物事を思考することが大切なのではないかと思います。

たとえばCREWの場合だと、国土交通省が2018/03/30に出した「通達」や道路運送法といった「法律」が移動領域における規定になっているわけですが、わたしたちはそこに記載のある文章を一文字一文字読み、一次情報で物事を判断するようにしています。

通達

国土交通省通達:道路運送法における許可又は登録を要しない運送の態様について

その二:思いっきり思考を飛ばしてみる

そんなに万能ではないわたし達

一次情報に触れてクリアに考えると前章の末尾で綴らせていただきましたが、人間はそんなに万能ではありません。

やはり制約の方に頭が持っていかれる傾向にあると思っていて、そのときに「一旦頭を思いっきり振ってみる」ということを私はよくやっています。

ハイクオリティなクリエイティブを浴びるように見る

特にIA設計・UI設計の際にはあえて思考を飛ばしてみることが多いです。 プロダクトチームはをUIという窓を通してサービス体験をユーザーに届けるわけですが、制約のあるサービスにおけるUIは非常に難しいです。

制約を念頭に置きすぎるとクリエイティブさが失われてしまう傾向にあるため、一旦制約抜きでユーザーがハッピーになるUIってどんなUIなんだろうと模索してみます。

しばしばDribbbleなどのハイクオリティなアウトプットの見れるサイトを眺めてなるだけ自由度高くデザインを考えるようにしています。

クリエイティブ

ディスカッションの場でも一旦思考を飛ばしてみる

思考を飛ばすためにディスカッションの場を活用するのもアリかと思っています。 一旦自分の主張は差し置いて、楽観的な立場 vs 悲観的な立場にそれぞれ立ち議論をしてみると、凝り固まっていた自分の思考がほぐれて意外な発見があるのでおすすめです。

その三:最適なアウトプットをひねり出す

PMの仕事は市場に求められる製品を世の中に出し、PDCAを回し最適な形に仕上げていくことだと思っています。 どんなに制約の強い難しい状況だとしても市場に受け入れられるアウトプットを出さなければなりません。

その感覚は「ひねり出す」という言葉が一番しっくりきます。 UIUXには正解がなく、かつ法律も万能な存在ではない中で、最適なアウトプットを出さなければならないのです。

納得行く案を軸にグラデーションで提示する

アウトプットは望ましいユーザー体験と制約条件のグラデーションで決まってくると思っています。 特にUIの話になるのですが、一つのパターンのみで「これで行きたいです!」では決まるものも決まりません。

複雑な制約の中で最適解を見つけないといけないため、社内の会議でもなるべく様々なパターンを提示し、議論しやすい土台をPMが率先して作っていくのが良いかと思います。

そして「納得行く」という枕詞をつけたことには理由があります。 複数のパターンを提示はするものの、PMとしての意思は固めておく必要があるかと思っています。

ユーザー体験としてどういったインターフェイスが良いのか、PMは考え抜き答えを持っているかどうかが重要かと思っています。

最後に

長文に渡って「法とUX」というテーマについて私がこれまで学んできたものを綴らせてもらいました。

規制領域でプロダクトを開発するPMに求められることとしては、法・規定を文章レベルでのベースの前提としながら(制約1)、とはいえそのときどきで変わる世論の流れをみながら(制約2)、UI/UXを最適な形で練り上げていくのがのように思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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